娘ふたりと一緒にお母さんと温泉旅行に来ている気分。
朝。ベットルームでまだ娘たちが寝ていたので、ひとり芝居のお稽古をした。
まもなく本番なのに、お母さんの事で2回稽古に出られなくなったから。
耳の悪かったお母さんには一度もお芝居を見てもらえなかったので、やっと見てもらえた。
手術が決まっていた日に、お母さんは死んだ。息を大きく吸って吐いて、その息がだんだん深く長くなって。
足はすでに冷たくなっていた。
点滴ももう身体がうけつけない。
一生懸命最期まで生ききる姿をわたしたちに身をもって教えてくれていた。
「本当にがんばった。お疲れさま」
誰もがそうたたえた。
やっと楽になれて良かった。
安らかな顔を見てみんなほっとした。
最後の夜、わたしを選んでくれてお母さんありがとう。
まもなく棺に入る。
今晩は娘たちと一緒だね。