小川洋子 原作
鄭義信 脚本 演出
大阪上本町駅すぐの新歌舞伎座
チケット代金9000円
7列目真ん中で観せて頂きました。
3つのセットをくるくる回して、部屋、隠し部屋、外の世界のシーンにしていました。
とある島では徐々に何かが消えていきます。消えると共にみな記憶も消えるのですが、中には記憶が消えない人間がいて、その人間を排除する組織があります。
でもこれは特別な世界の話しではなく、今の日本のお話しかもしれません。
たとえば時代と共に変わっていく電化製品。
ある日更地になり新しい店舗がオープンすると、以前はどんなお店があったのか思い出せない。
テレビで良く見る芸能人の死に驚くけれどその悲しみは浅くあっという間に忘れてしまう。
気に入って使っていたのに、新しい物を買うと忘れるどころか失くしても気がつかない。
仲が良かった仕事仲間も会社を辞めたとたんに縁が切れる。
そんな日常とこの島とではどんな違いがあるでしょう?
この島の人間は物だけではなく身体の一部を失い最後に死にます。
生き残るのは記憶が消えない人間だけ。
ラスト石原さとみさんが消える前のシーンが切なく、また生き残る男に真っ赤なバラの花びらが舞い降り、バラは1番はじめに失くなったものでそれが返ってきた事で希望の象徴で終わりました。
とてもとても美しいシーンでした。
とてもとても美しかったです。
そして4回のカーテンコールにスタンディングオベーション。
石原さとみさんがとても嬉しそうでした。
短期間に失くなるから不自然ですが、長い時間をかけて失くなったのならば普通の人間の一生なのかもしれません。
すると記憶が消えない人間は人間ではないのでしょうか?
パンフレットに小川洋子さんと鄭義信さんの対談が載っていました。『密やかな結晶』とは「人間があらゆるものを奪われたとしても、大事に手の平に握りしめた、他の誰にも見せる必要のないひとかけらの結晶」のこと。
わたしは多くを握りしめている。だからどれが一番大事なのかわかりません。
それは命尽きる時に気がつくのでしょうか?
持っているものが少ない人ほど握りしめる力が強いので、その結晶はどんどん硬くなり、きっとダイヤモンドのようにキラキラしているのでしょう。
そしてすでにその結晶を常に意識しながら生きている人は本当の自分そのものの純度が高い人
鄭義信さんのお芝居は泥臭いのですが、これはとてもスマートでした。
その演出の幅の広さに驚きました。
石原さとみさんの可愛らしさを存分に楽しめました。
また、歌とダンスのシーンが何回もありポップで楽しかったです。
たぶん狙ったであろうお笑いのシーンもまんまと笑ってしまいました。
鄭義信さんが居ないのはわかっていましたが、わたしはもちろんの事一緒に行った3人もがっかりしていました。
大きな大きな灯そのものの鄭義信さんは人間パワースポットなので、みんなきっと会いたがるのでしょう。
帰りに一緒に行った4人で『五感 北浜本館』でお茶とケーキを頂きました。
とても美味しくおしゃべりも楽しくしあわせな休日でした