メジャーデビューまでの道(はてなブログ)

日記を書く事で、自分で自分を見る事ができる。だから書いてるよ。

『GS近松商店』

ネタバレたくさんあるので、観劇予定の方はそのつもりでお読み下さい。
 
 
鄭義信さん演出。観月ありささん主演。近松門左衛門の『女殺油地獄』と『曽根崎心中』をひとつの芝居にした作品なので、話が濃いです。
 
 
いきなり本物の小さいトラックが舞台の上を走って来たのには驚きました。後から自転車やバイクも走って来ます。
 
 
GSはガソリンスタンドのことだったのです。前説で聞くまでは気がつきませんでした。
 
 
わたしは最前列だったのですが、座席には透明の四角いビニールが置いてありました。「2列目までは何かが飛んで来るので、そのビニールを使ってよけて下さい」と山崎銀之丞さんの前説で何回か練習しました。
 
 
はじまって早々、飛んで来ましたよー。鄭さんの演劇は映画のずっと前から4Dですよ。匂いあり。客いじりあり。エンターテイメントですよ。
 
 
この内容でガッツリシリアスにせず、あえて笑いを入れて外すのが鄭さん流。
 
 
テレビや映画でおなじみの観月ありささん、小島聖さん、石田えりさん女優オーラハンパないです!怪しく美しい
 
 
観月ありさ(以下敬称略)は右足が不自由で引きずって歩く。夫に浮気され、潰れかけのガソリンスタンドを切り盛りしている。そんな彼女に惚れる吃音の年下の男性、渡部豪太
 
 
足りないものを補うように仲良くなっていく二人。若さゆえに一途な男から、二人で逃げようと誘われるが、どうしても一緒には行けないと断ると、男はガソリンをかぶり、その中で二人は転げ回る。真っ白な衣裳の二人はドロドロに汚れる。
 
 
男が首を絞め女を殺すシーンは、目の前に顔があって、渡部の鬼気迫る顔が恐ろしかったです。観月ありさも徐々に力を失っていくのがリアルでした
 
 
心中するのは観月ありさの兄役、升毅と中国から日本にお嫁に来た女。
 
 
升毅はお金に困り自殺しようと決意するが、それを察し二人で心中する。
 
 
この中国女が、3ヶ月だけ結婚していた男に見つかった時の二人のセリフには考えさせられました。
 
 
女は日本に来れば幸せになれると思ったが、実際には掃除、洗濯、食事、畑仕事、寝たきりの父親の介護でこき使われたと言う。
 
 
女を金で買おうとした男が悪いと思いきや、男は結婚するために何度も中国に行き、結婚の手続きにもお金がかかり、中国の父親にも高い結納金を払った。家政婦を雇うのなら、こんなにお金を使わない。自分だって幸せになりたかったと。
 
 
観月ありさの姉役の小島聖も、付き合っていた男が、自分の写真館の経営難のために金持の女と結婚する。
 
 
泣く泣く別れたのに、又男に言い寄られよりを戻すが、それにショックを受けた妻が自殺未遂をしたため、結局男は妻の元に戻る。
 
 
村の青年団の若い男たちも、結婚が出来ずにいる。
 
 
この村はみんな貧しく、また狭い社会のため閉塞感が漂う。
 
 
ラストは舞台奥の大きな大きな月に向かって、観月を殺して自殺した渡部との二人の遺体を持ち上げたまま、スローモーションで全員で月に向かい歩いて行く後ろ姿。
 
 
この舞台も、ラストが美し過ぎます。いつもだけど鄭さんはラストの絵が「うまいなぁ。ずるいよー。さすが演劇一筋でやって来た人にはかなわないなぁ」と思わされます。
 
 
それなのに、最前列なのに、中腰になりながらも何度も立とうと思いながら、とうとうスタンディングオベーションが出来なかった自分が情けないです。そんな勇気もないんです
 
 
会場出口近くで鄭さんに会えたので、握手してもらっちゃった
 
 
バリバリミーハーのファンですから
 
 
 
今度は姫路キャスパホールの『杏仁豆腐のココロ』でお会い出来ますように