お稽古が終わり、アトリエを出て、狭い廊下のけたばこで、演出さんがわたしに
「今日は疲れてたのかな?元気がなかったようだけど」
と聞いてくれた。
わたしは小声で
「小林さんに圧倒されて、なんかドキドキしてしまって」
と応えると、演出さんが笑った。
そこへ後から靴を取りに来た小林さんが「なに?なに?」とたずねてきたので、わたしは観念して
「小林さんこわいわー。圧倒されます」と言ってしまった。
「なに練習なのに」
「小林みね子に、後2ヶ月で慣れないと。わたしまだ若葉マークついてる初心者ですから」
と、3階から狭い階段を下りながらいいわけをした。
「新しい台本をもらったら、みんな初心者だから」
1年前の反省会の時に言われたことを、思い出した。何かの芸能の達人に、小林さんも同じことを言われて、感激したそうな。
下までおりると
「上手にやろうと思ってるんじゃない?芦田さんのままでいいのに」
と、にっこり笑って去っていった。
今度のお稽古では負けないぞなどとひとりでセリフを練習している時は思うのだけど
またバージョンアップしてくるんだろうなぁ…あの笑顔…
やっぱこわいわー