主人公の生き辛さは、今はやりの発達障害というくくりのせいだと思う。
本当に良くこんなに細分化して色々な病名を作り、病人を量産しているのかと、腹立たしいのだけど。
でも確かに今の学校や社会のシステムから少しでもズレると生き辛くなる。
そんな主人公にとってはマニュアルがある事こそが救いで、コンビニのマニュアルが自分の居場所を作ってくれている。
それも年齢が上がるにつれ、アルバイトのまま彼氏もできない状況を家族や友達は怪訝に思いはじめ、また社会から孤立してしまう恐怖を感じる。
そこへコンビニに白羽という、やはり生き辛い人生を送る男性が現れお客にストーカーまがいの事をして辞めさせられる。
そんな彼がコンビニ近くをうろついて又ストーカーをしようとしている所を声をかけ、主人公は彼が行くところがないのというので、一緒に住もうと提案する。
ここで『逃げるは恥だが役に立つ』風に、ハッピーエンドになってくれたら良いのだけれど。
男はヒモになりたいために、主人公にコンビニをやめさ何と正社員として働かせようとする。
男が毎日面接する場所を探している間、主人公はコンビニという規範を失い、ただあるものを食べ寝る毎日に変わる。
コンビニで働いている時には人一倍真面目で規則正しく生活する事も仕事のうちと決めていたのに。
あまりにも身勝手なこの白羽という男が気持ち悪い。
彼から吐き出される言葉はトゲと毒ばかりだ。
主人公はどんなに彼からひどい言葉を言われても怒る感情がないのがすくいなのか?
そんな彼を客観的にながめる。
主人公が18年間コンビニで働き続けて貯めた貯金も底をつく頃、やっとひとつ面接までこぎつけ、2人で面接会場まで向かう途中で寄ったコンビニで、主人公はその店の従業員のように、売り場を直しはじめる。
そして自分は人間ではなくコンビニの声を聞きそれに従うために生まれてきた『コンビニ店員という動物』だと悟る。
何とも後味の悪い話しだが、なぜか身につまされる。
白羽が言い出した、今も縄文時代と変わらないムラ社会の価値観とは、稼げる男がもてて、女は子供を産まないと価値がなく、ムラのお荷物になるという。
コンビニのアルバイトは底辺で店長は負け組だという。それも自分で考えたのではなく、おそらくはネットの受け売りだろう。
主人公と白羽が付き合っていると聞くや、家族もコンビニ仲間も、とたんにオスやメスになり二人の事を聞きたがる気持ち悪さは、何度も強調して書かれていた。
芥川賞を取った作品。まさかこの題名からは想像もつかない内容だった。
コンビニもいよいよ無人化がスタートするらしい。
コンビニで働いている人たちはどこへ行くのだろうか?