東京駅から見たオフィス街は22時半だというのに、半分くらい窓に電気が点いていた。
仕事をしているのだろうか?電通の事件が記憶に新しくても皆残業をしているのだろうか?
真相はわからない。
そこから両国まで移動。
山手線のホームの音楽が耳障りでうんざりする。
総武線でいきなり女性の声がした。
「やめてください!最低ですよ!男のくせに!」
痴漢だろう。
ドアひとつ先なのでその後ふたりはどうなったかわからないが、車内はシンとするものの皆無関心を装っているのがおそろしい。
そんなに痴漢は珍しくないのだろうか。
わたしはその声が頭から離れない。
誰もが心に厚いコートを着ているように感じる。
ここでは心の薄着はすぐに病気になってしまうのかもしれない。
人の密度は時間が経つのを遅らせる。
ほんの5分電車を待つ間がとても長く感じる。
きっと姫路とは違うスピードでこの街は回転しているのだろう。
わたしの身体の水だけその回転についていけず、ちゃぽんちゃぽんと揺れている。
皆は洗濯機のように速度を上げたまま身体の水を回転させている。
東京の夜はおそろしい。
これだけ芸術があふれている街なのに、芸術が必要な人たちは受けとるすべを知らない。