タクシーで子ども二人を連れて酒造に向かった。
途中2回踏切につかまった。
入口を入ると大きなソフトクリームのポスターがあった。
「最後にこれを食べたい」と娘が言う。
お目当てのうどん屋に真っ先に行き肉ゴボウうどんとキツネうどんを注文する。
テキパキとお客さんをさばいているのは…みなれた劇団の先輩だった。
酒造の敷地の中、建物をつなぐ通路にはビッシリと出店が出ている。
各店の上にある看板は手描きで全て統一されていた。それがお祭りの時に出る屋台とは違う印象を与える。
わたしたちは、豆腐ドーナツお雑煮、餃子、牡蠣グラタン、お芋汁など、それぞれ食べたいものを買いながら、ゆっくり建物の中をみて回る。
子どもたちが体験室で、豆の入っている小皿から、割りばしで豆をつまんで空の小皿へ移してみる。近くの黒板には速かった人の名前と30秒で34個と書いてあって「練習してきたのかな?」などと驚いて話しあった。
食べるもはみな薄味だ。あちこちから「おいしい」という声が聞こえる。座るスペースを譲りあって、買っては食べ歩いてまた買い食べる。
ただそれだけなのに、子どもたちは楽しいと喜んだ。
地のものを扱っている食べ物やさんの、年に一度の展示場だ。
三人で歩いていたら、全てのお店の看板や、展示場ポスターを描いている版画家さんとばったり会った。
子どもたちを紹介すると、版画家さんは手に持っていた
熱い汁物を持ってくれるよう息子に頼み、斜めにかけていたバッグから、本物の版画が刷られているハガキをくれた。
息子ははにかみ何度もハガキを見た。
よく家族で行くスーパー銭湯に飾られている、大きな版画と一緒だ。
留守番の末っ子に、おいしかった豆腐ドーナツと、おぼろ豆腐をお土産に買った。
そして最初みたポスターの建物の中に入り、ソフトクリームを注文する。酒かすで出来たソフトクリームに、色の濃いみりんを少々かけてくれた。
家に帰ると夢をみていたような気がしてきた…
その日の夕飯は薄味で野菜がメインの料理ばかりを作った。