演劇とは集団催眠である。
仕込みをして真っ暗なアトリエで、照明と音響、舞台装置で何度もゲネプロをするうちに、だんだん
「そこは陸軍被服省倉庫の二階」
に思えてくるのです。しかしわたしはその自覚はないのですよ。催眠術にかかっちゃってるから。
本番、お客さまにもいかにして同じところに来てもらうか!
ここが演出のうでのみせどころではないでしょうか?
といっても、わたし演出にはぜんぜん興味ないのですけれど。
催眠術にかかってしまいたいタイプが、役者志望なのかもね。
すると、演劇は幕が開いた最初、つかみが一番大事なんだろうなぁとわかってきました。
アトリエではない別の場所へ、最初に飛びそびれてしまったお客さまは、すでに演劇の世界へ飛んでいる周りと距離ができてしまい、ますます入りづらくなるからです。
いかにたくさんの人を、催眠状態にするか!これが演劇の全てでしょう。
また、演じるがわも、今回なら、すすり泣くお客さまの声がきこえてきて、わたしがその感情をもらって、ますます気持ちがはいっていったわけでして。
役者もお客さまも、あまり境界線ないですね。
先輩がたの言う「いいお客さまだった」というのは、リアクションのことでしょうね。
なぜ、この催眠術に気がついたかと言いますと、本番終わってからも三日間くらい、わたしまだ絶対に1945年の広島にいました!
水をもとめてさまよっていました。
その間家族が見ていたわたしは、体だけで心はなかったのでした。
ところが、ふっと、われにかえる瞬間があったんですよ。あっ、もどってきたっ!っていう瞬間。
演劇こわおもしろい。
ぜひ劇場へ。
おもしろくなかったら、それは催眠術にかかりそびれたのでした。
観劇を決めたら、はなから、かかるき満々も必要かと。
だってかかると、たのしいよ♪
補足
ベテランの役者さんは、自分で催眠状態をコントロールできるようになってるんだわ。だから、演じ終わると、現実にポンッて、自由自在に帰れるようになるのでしょうか?
もしくは、催眠術をかけられるようになるのかも?
こちらは、まだまだ謎です。
修行だわ。