わたしはずっと(いちいのひと)と読んでいました。
一般市民。名前が知られていない人という意味です。
今回の『あの夏』3話の中で1話目に出てくる
[やまさきせつこちゃん]は、小学校5年生。
映画館を営んでいるお父さん。これだけしか情報はありません。
被曝して収容所に横たわり、たったひとりで『アヘン戦争』の映画の主題歌「風は海から」を、歌っていました。
泣きもせず痛いとも言わず。
その歌をYouTubeで観てみると、眼の見えない娘が戦争で逃げまどう人々に押され、お姉さんと離れ離れになりひとりぼっちになるシーンでした。
まさか自分が、あの映画のように家族と離れ離れになり、被曝して身体中大火傷をするとは思わなかった事でしょう。
勤労動員の井上玲子さんが、せつこちゃんの火傷の手当てをした、ほんの少しの時間を、一生忘れられなかった物語でもあります。
わたしは玲子さんの意志を引き継いで[やまさきせつこちゃん]を覚えておいてあげなければと思っています。
今回の3遍の朗読の中では、いちばんドラマティックではありません。
しかし被曝し、一瞬にして全てを奪われ苦しんで死んでいった全ての人たちの物語です。